カローナ姫の黒猫
頬に残る感触を消そうと、ゴシゴシ頬をするカローナのもとに。
「ユージス…どういうつもりだ?」
ゾクッ。
と、歩み寄ってきたのは、笑顔を携えたルイだ。
まるで、地の底から聞こえてくるような低い声に会場の誰もがゴクリと息を呑む。
「…挨拶だよ、北大陸流のね」
悪びれた様子もなく、フッと魅惑的に微笑むユージス。
「挨拶ね…。悪いけど傍から見て気分は良くない。カローナは俺の妻になる、今度からは避けてもらいたい」
ドキン。
物腰は柔らかいが、強い口調でそう言うルイに思わずカローナの胸は高鳴った。
「そうだね、悪かったよ…。じゃあ、私はここでお暇しようかな。ルイ、今日まで城に留まらせてもらうよ?客間借りるね」
「あぁ…」
若干、眉を潜めつつもルイはその言葉に肯定の意を示す。
そして、ユージスは去り際に再度カローナに向かって「12時だ、忘れないで」と言葉を残して、ナチと共に会場を後にしたのだった。