カローナ姫の黒猫

『…逃げて。そして、あの人を…たすけてあげて』

突然頭の中にそんな声が響き、カローナは目を見張った。

カローナを守るようにに立っているのは、カローナよりも幾分か年上に見える女性。

銀髪をなびかせた綺麗な女性が、ユージスの魔法を遮ってくれている。

「…あなたは?」

小さく尋ねるも、首をフルフルと横に振る女性は優しく笑みを浮かべるだけ。

不思議な光景に圧倒されたカローナが小さく息を呑んだ。

その時だった。

「カローナ!」

「ルイ!?」

彼女の前に飛び出したのは、黒猫の姿をしたルイ。

なんで、この場所がわかったのだろうか…、内緒で出てきたのに。

一瞬、そんなことを考えたがカローナだったが、無意識のうちに猫の姿のルイをギュッと抱きしめていた。

…こ、怖かった。

ルイに騙されたってことよりも、彼のことを忘れてしまうかもしれないということが。
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