カローナ姫の黒猫
「姫様、とても素敵です…ごめんなさい。私、私も本当は…」
「リリス。いいの。今までわがままばかりでごめんなさい。あなたにはお世話になったのに…」
「カローナ姫様…」
今にも泣き出しそうなリリスを見て、カローナは小さく微笑んだ。
準備を終えたカローナは、リリスと共に婚約パーティーが行われる会場へと歩みを進めていた。
そして、カローナが会場に足を踏み入れた瞬間。
「…まぁ、なんて、可愛らしい…」
「本当に、カローナ姫を見ていると、亡くなったフレア様の若い頃を思い出しますわ」
出席している貴族達から、そんな感嘆の声が聞こえてくる。
後から後からやってくる貴族たち。
口々に「おめでとうございます」「お幸せに」なんて口先だけの言葉を紡ぐ。
…気持ち悪い、本当におめでとうだなんて思ってもいないくせに。
自分たちが被害に合わなくてよかったって思ってるんでしょう。
どうしようもない嫌悪感を覚え、カローナはソッとバルコニーに出た。