カローナ姫の黒猫
外は静かで、草木のサワサワとした音が心を和ませてくれる。
…やっぱり、結婚なんて…嫌だよ。
ジワっと瞳に涙が浮かぶ。
その時だった。
「失礼、大丈夫ですか?気分が優れないようだけど…」
知らない若い男性が私の隣に立っているのに気づく。
バルコニーに先客がいたのだろう。
気配に気づかなくて、カローナは、慌てて目元の涙を拭った。
「あ、大丈夫ですわ。ありがとうございます」
年齢は、私より少し上か…?それとも同い年くらいだろうか。
漆黒のサラサラの黒髪に、綺麗な黒い瞳が印象的。
中性的な顔立ちは、一見すると女性のように見えなくもない。
きっと、彼が通れば十中八九、女の子たちが放っておかない…そんな端正な顔立ちの青年だ。