カローナ姫の黒猫
天地がひっくり返るような出来事なのだから、もしカローナが父の立場であればこれ程嬉しいことはないだろう。
だけど、せめて別れの時くらいそんなに嬉しそうな顔しなくても…。
正直な父親に思わず苦笑いを浮かべるカローナ。
その時。
「カローナ、私はずっとシルヴィ殿と勝手に婚約させてしまったことを悔やんでいたんだ。お前に無理やり国のためとはいえ、あんな男と結婚させようとしていたなんて……本当にすまなかった」
「お父様…」
不意に父親が彼女に向かって謝辞を述べる。
なんだかんだ言いつつも、娘のことを気にしてくれていたのだとカローナは嬉しく感じた。
「ルイ殿は、まだ若いがとても立派な方だ。きっとお前を支えてくれる、幸せになるんだよ…カローナ」
父は、ニコリと微笑んで娘の身体をきつく抱きしめる。