カローナ姫の黒猫
「レイン、オルテカ城ってすごいわね…」
前を行くレインに向かってカローナがそう声をかける。
しかし。
「そうですか?まぁ、大陸の中心国だし、普通だと思いますけど?」
彼は、しれっとした様子で答えるだけ。
…これが普通って…じゃあ、私の暮らしていた城はルイたちにとって物置きみたいなものかしら?
と、心の中でそう考えた時。
「レイン兄様…!お帰りなさい」
まるで鈴を鳴らしたような可愛らしい声が響き、小さな少女がレインに向かってギュッと抱きついた。
「ただいま…ロコ。珍しいじゃないか、お前が卜を出迎えるなんて」
「そんなことないわ。ロコ、兄様が帰って来るの待ってたのよ?」
サラッとなびく黒髪は肩で切りそろえられ、ぱっちりとした二重に、小さな赤い唇。
まぎれもない美少女がそこに立っていた。
か、かわいい…!
見た瞬間、そう感じてしまうくらい可愛らしい少女にカローナは卒倒しそうになる。