カローナ姫の黒猫
気づけば「ちょっと待って!」とその男性を呼び止めていた。
「…何か用?」
面倒くさそうにゆっくりと男は振り返る。
「…っ」
その姿に威圧感を感じ、カローナは圧倒され怯んでしまった。
「何?用がないみたいならもう行くけど?」
そんな彼女を一瞥し、男は小馬鹿にしたように軽く口角をあげながらそう呟く。
カチン。
「よ、用ならあるわ…!あなたこんな小さな子にぶつかっといて謝りもしないなんて、失礼じゃない?」
その人を馬鹿にしたような態度に頭にきた彼女は、ほぼ勢いでそう啖呵を切った。
すると。
「…は?ぶつかってきたのはそっちだろ?」
スッと綺麗な目が細められ、男はそう言い放つ。
「確かにそうかもしれないけど、泣いている女の子を放っておくなんて最低だわ」
未だに泣くのをこらえているロコをそっと抱きしめ、カローナは言葉を紡ぐ。