カローナ姫の黒猫
一瞬、男はロコに視線を向けると小さく肩を落とした。
そして。
「…悪かった。こちらも曲がり角には気をつけるべきだったよ」
と彼女に向かって謝辞を述べる。
ロコの方もだいぶ気持ちが落ち着いたらしく、カローナにギュッとしがみついてはいるが、泣くのはなんとか堪えたようだ。
「私もぶつかってごめんなさい」と、男性に向かってしっかり誤っているロコの姿にカローナは小さく笑みをこぼす。
「ロコちゃんに謝ってくれてありがとう…。えっと、あなたは…」
服装を見る限り、地位の高い貴族のようだが…。
「…ユージス」
ポツリと消え入るような声だったが、カローナは聞き逃さなかった。
「ユージスというのね。私は、カローナよ。実はまだこのお城に来たばかりでここのことよく知らないの。よかったら仲良くしてね」
カローナは、その男…ユージスに向かってとニコリと笑みを向ける。