恋愛歳時記
征司さんと過ごす日曜日。

二人で分担して家事をして、テレビを見ながら話したり、一緒にご飯を食べたり。
合間に交わされるキスや、ちょっとしたハグ。

確かに一緒にいて、ドキドキしたり、照れたりすることは多い。
まだ付き合って間もないのだ。

征司さんをかっこいいなと思う反面、ふとした時ににじみ出る可愛らしいダメっぷり。
そのギャップに弱い自分にビックリもしている。

でも、この違和感のなさはなんだろう。
もう何年もこうして二人で日曜日を過ごしてきたように、征司さんの隣は心地良い。

お昼に焼きそばを食べながら、征司さんがボソッと言った。

「香奈とは食べ物で意見が分かれることって、あんまりないよな」

「そう? たまに征司さんが塩ラーメン、私、醤油ラーメンとかあるじゃない」

「そういうのじゃなくて。『なんでもいいけど』って言っておきながら、ラーメン屋連れてけば『ラーメンなんか食べたくない』みたいな言い方、お前はしないだろ」

「たしかに。っていうか、それはちょっとヒドイよね」

「そう思うだろ。結構、そういう女はいるぞ。お前は『今日は焼き肉かイタリアンの気分です。征司さんは?』って言い方をする。俺はその方が嬉しい。選択肢があって、なおかつ俺の意見も聞いてくれる。しかも、味覚が似てるし」

「まあ、私たち育ったところが同じだからね。給食とか、地元料理とか、ほとんど一緒だもん」

そう、私が作った焼きそばも、干し桜エビが入ってる。
私たちの故郷近くの特産品で、我が家では焼きそばに入れるのがポピュラーだ。
征司さんの実家でもそうだったみたい。

ほとんど食材のなかった征司さん宅にあった5袋もの桜エビ。
聞けば、征司さんのお母さんが大量にもらって、征司さんとお兄さんに宅配で送りつけたらしい。

「そう、それだよ。俺、同郷ってこんなに話が合うのかって驚いた。去年、電車でたまに話してたときも、元カノと話すより何倍もリラックスしていた気がする。まあ、美香の結婚式で、何となく納得したけど」

どういうこと?

「お前、ウチの親戚連中と一緒にいても妙になじんでただろう。俺もお前の家族は一緒にいて楽しい。そんなところも気が合う理由なんだろうな」

征司さんはしみじみと言った。
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