さくらいろ【短】
― プルルルル――…
「ドアが閉まります。駆け込み乗車は……」
お決まりのアナウンスを耳にしながら飛び込んだ電車はやっぱり満員で、ギュウギュウと押されながらも足を踏ん張った。
「ハァ……」
まだ朝だと言うのに、既に心も体も疲れている。
残業残業の毎日でクタクタになっている体は、週末にやって来る休みだけでは上手く癒せない。
このご時世、働く所があるだけマシなのかもしれないけど、時々『どうしてこんなに働いているんだろう』と虚しくなる。
昨日みたいに仕事でミスをしてしまうと、特にそうだ。
辞めようかな……
仕事が嫌いな訳じゃない。
むしろ、やり甲斐のある仕事だと日々感じているし、同僚も優しい人達ばかりで居心地だっていい。
それでも、嫌な事があるとどうしてもマイナスになりがちな思考が、“何か”に負けてしまいそうになる。
貯金は、それなりにある。
その気になれば、田舎に帰る事だって出来る。
それもいいかな……