さくらいろ【短】
翌朝、目を覚ましたあたしは、久しぶりに心も体もスッキリとしていた。


ベッドから下りて、ベッドサイドに置いてあるフォトフレームに視線を遣った。


その写真に写っているのは、母とあたし。


照れ屋な父がカメラマンに徹してくれ、上京する時に実家の近所の神社で撮った物だ。


桜の木の下にいる母とあたしは、どこか寂しさを堪えるように笑っている。


「もうすぐ咲く頃かぁ」


桜が好きな母の影響で、あたしも好きな花。


どうせなら、あたしが一番好きなこの桜を見たい。


頭の中で予定を組み立てながら、自然と笑みが零れた。


「いっぱいリクエストするから、覚悟しててね!」


その代わり、母に似合いそうな桜色のエプロンをプレゼントしよう。


照れ屋な父には何を買って帰ろうかと考えながらカーテンを開け、窓から射し込む光を浴びながらグッと伸びをした。


「よし、今日からまた頑張ろう」


落ち込む事もあるけど、きっと今日は大丈夫――…。





             END.


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