Secret Fetishism【SS集】
カウンターバーの端に座るあたしの右手には、マティーニのグラス。
右隣の課長がウイスキーを飲むと、氷が音を立ててグラスの中で踊った。


「なぁ」

「は、はい……」

「いつも何を見てた?」


ピクリと強張った指先で、ずっと離せずにいるグラスの縁をなぞる。


「答えろよ」


「眉根を……」


戸惑いながらも震える声で紡ぐと耳元でフッと吐息が零され、一呼吸置いて重低音が響いた。


「それって、フェティシズムってやつ?」

「……っ!」


大袈裟な程体を震わせて反応したあたしに、課長が口元を緩める。


「麻衣(マイ)」


耳元で響く声に腰が砕けそうで、ゾクリと背中を駆け抜けた何かが脳髄までもを犯す。


「もっと見たくないか?」



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