Secret Fetishism【SS集】
「好きだな〜」


肩を竦めてフッと笑った彼は、満更でもなさそう。
仕事で徹夜続きだったせいでまだ眠いのか、欠伸を噛み殺してソファーに腰掛けた。


部屋の中には、ベランダに干した洗濯物から漂う柔軟剤の香り。
あたしがお気に入りの物を、付き合った頃から彼の部屋にも置くようになった。


彼の傍に歩み寄って、隣に腰を下ろす。
そのまま彼の肩に頭をもたれさせて体重を預ければ、いつものように彼の左手があたしの髪を撫でた。


こうして甘やかされる瞬間が、堪らなく好き。
あの柔らかな香りが、あたしを優しく包み込むから。


自分の物だって同じ柔軟剤で洗濯をしているのに、自分の服の匂いを嗅いだだけじゃこんなにも幸せな気持ちにはなれない。


同じ物を使っていても、彼の方が好きなの。
彼じゃないとダメなの。


ねぇ、どうしてだと思う?

ねぇ、どうしてなのかな――?



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