Secret Fetishism【SS集】
風を運んで来るような、風鈴の涼しげな音。
蜂蜜色の月といくつもの星を携えた、藍色の空。
神社の方から聞こえて来る、祭囃子。
あたしと彼の浴衣――。
田舎町に相応しいそれらは、夏の夜を彩っている。
「あっち〜!」
缶ビールを片手に縁側にドカッと腰掛けたのは、三つ上の幼なじみ。
子供が少ないこの片田舎で、あたし達は兄妹みたいに育った。
“お隣りのお兄ちゃん”は、いつしか“憧れの人”へ。
それから幾月もしないうちに、“好きな人”に。
そして、今は“欲情の対象”に――。