月のしずく
立ち止まった頃には、ズボンの染みは膝近くまで広がっていた。





「マジでどうした?なんか今日変だぞ?」






しばらく返事がなかった。



「何でもないよっ!遅刻すると思ったから走っただけ。あたし先に行くね?」






そう言って、俺の返事を聞かずにまた走って行ってしまった。













おかしい。



いつもと違う。





授業が始まっても、全然集中できなかった。




「おいっ!弘人っ!」

「えっ?!」




終業のチャイムも聞こえず、知らぬ間に休み時間になっていた。




どうやら様子がおかしい俺を心配して、話しかけてきた聡の声にも気付いていなかったらしい。






「どうしたんだよ?今日ボーッとしすぎ。何かあった?」





聡には相談しようと思ったけど、話すとなると何から話したらいいのかわからない。



とりあいず思ったことを話すことにした。







「俺さぁ、やっぱ綾咲のこと好きなんだよね。なんつーか……気になるみたい。」




聡は俺の話を黙って聞いていた。





一通り話した後には、自分で何を言ったのか所々しか覚えていなかった。
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