月のしずく

距離

あの日から彼女は俺を避けるようになった。





俺も自然と彼女を避けるようになった。





席替えをして席も離れた。





帰りも聡と帰るようになった。





ただ、気が付いたら目で彼女を追っていた。













「弘人。あれから結局話してないの?」

「うん。」





お昼も教室から離れて、学食か屋上で食べるようになった。


その日も屋上で食べていた。



「いいの?このままで。」





今更どうしろって言うんだよ……



迷惑だって言われたらどうしよもないだろ。



俺はもう彼女を忘れる。



そう決めた。






「お前は頼りないって前に言ったよな?今は違う。お前は逃げてるだけ。」





俺は逃げてない。





心の中でそう叫んだ。





「今のお前はただの意気地なしだ。フラれんのが怖いんだろ?しつこいんじゃなかったのかよ?どうせフラれるんなら当たって砕けろよ。」





俺は逃げてない。



でも楽をしてるのかもしれない。



それが“逃げ”なのかもしれない。






「お前はただの弱虫。意気地なしなんだよ。結局。」
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