sweet milk【完】
エアコンの風が、心地いい。
私の背中、しめってる。
腕をつかんだ、秋雄の手も。
教室にいた頃は
ありえないと思ってた。
私にとっては
遠い昔の戦争の話より、
もっとずっと現実味のない
ものだった。
光る、糸をつなぐ相手。
その手のしめりと温度。
それが今、少し震えるほどに、
うれしい。
「テレビ、消して」
抱いて、と言ったのと今のは同じ。
秋雄とつき合いだしてからの二年間
今までずっと言えなかったのに、
今日言えるのはなぜだろう。
不思議な心地で自分の声を聞いた。
抱いて。
察したように秋雄は黙って、
テレビと部屋の明かりを消した。