sweet milk【完】
again
あの日。
少しぼんやりしながら、
隣りの達弥先輩とその友達の話を
聞くとはなしに聞いていると、
先輩には同じ学校に
最近つき合い始めた彼女がいるらしい事がわかった。
苦しいような、うつろなような、
小さなショックを受けた私がじっとうつむいていると
「どうしたの?眠くなっちゃった?」
ふいに、声をかけられた。
達弥先輩が私を見て笑う。
私の頭を軽くぽんぽん、とたたきながら。
暇でだるい長い授業中なんかに、
何度か夢想した全てが今、現実に叶っているのに。
なぜだか私は少しもうれしくなかった。
心臓の鼓動も止まったみたいにやんで、
魔法のように酔いからさめた。
微量のお酒のアルコールも、微量の先輩への想いも。
「そろそろ帰るね」
なんだか一気に気が抜けてしまい、
千香にそう言ってもう帰ろうとしたら
いつのまにか千香も彼氏も部屋からいなくなっていた。