sweet milk【完】
どのくらいの時間が経っていたかはわからない。
たぶん、ほんの数十分だと思う。
いつのまにか私は先輩に肩を抱かれ、
髪をなでられていた。
先輩は、甘い微かな香水と
汗の混じったようないい匂いがした。
その匂いに気をとられてぼんやりとしていたら
私のくちびるの上に先輩のくちびるが
そっとやさしくかぶさってきた。
やわらかい。
触れた部分からみぞおちの辺りまで
鼓動がつらぬくようなキス。
「…ごめん。我慢できなくなって」
かたくて長い腕に強く肩を抱かれたまま、
先輩のふせたまつげの長さにみとれ
低くかすれた声を聞いていた。
「俺、もしかして芽衣ちゃんのこと好きになっちゃったかも」
「・・・・・・彼女がいるのに?」
そんな会話を震えながらした、その時まで。
私は一生分ときめいて、たぶん死ぬほど幸せだった。
先輩の目が獣に変わる、その、一秒前まで。