sweet milk【完】
one summer day2
「芽衣ー俺のシャツどこ?あの黒いの」

「えー?タンス入ってない?」

ちゃんと探したぁ?と言いながら、私は彼氏のそばに歩いていった。

「ほら、あった!もー。」

「ごめんなさい」

「こんなんじゃ思いやられるなぁ、結婚してから」

「ごめんなさい」

「…全然ごめんなさいって顔してない」


テーブルに戻って、食器を片そうとしたら

シャツを着ながら彼氏が戻ってきて、

「ごめん、ごめん。お腹に障るよな」

私の手から食器を取って「ニンプさんは、座っていなさい」と笑った。


私はもうすぐ出産する。お腹の子は男の子で、すくすくと順調に育っている。

夏の妊婦はつらいと言うが、私は大したつわりもなく、ただ待ち遠しく

お腹の中の「彼」に出会える日を心待ちにする日々だ。

何よりも、大好きな季節に新しい命と出会えることがとても嬉しい。

「どっちに似てるかな」

「どっちでもいいよ。元気に生まれて来てくれさえすれば」

彼氏のそんななにげなく優しい言葉を聞けることも嬉しい。

私は、幸せだ。このうえなく。



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