ハートフル・アーツ

｢攻撃も…無理か。｣

王槍…貫通する一撃だ

本来なら岩に撃てば打点を中心に岩を穿ち壊せるだろう


王剣…斬撃のような一撃

本来なら岩を裂くことができるだろう

王蹄…粉砕する一撃

本来なら岩を砕くことができるだろう

王砲…吹き飛ばす一撃

本来なら岩を空高くに打ち上げるだろう

瞬時に思い付くこれらの攻撃も然り



足場による踏み込みや重心を支えるモノがなければ打てない


それは天義も同様だ




｢虎喰！｣

幸大は苦し紛れに放つ


虎喰…空間把握における自身最強の感覚鋭敏化


自分の間合いに置ける存在するモノの位置や動き等を把握する

相手の次の動作もある程度の予測ができる



流流しの発展とも言える意識や感覚の不要なモノを捌き、必要な情報を己に流し込む技





｢くそっ…

終わりか。｣

幸大が呟く



｢ごめん…｣

岩が眼前に迫る

眼を閉じた




『幸大！』

なずなの声…

｢走馬灯か…幻聴か…どちらにしろ、いない。｣

虎喰の力がそれを悟らせる


『幸大ならこのくらい大丈夫だろう？』

幻覚のなずなが笑う


『幸大だもん、easyでしょ？』

幻覚のジニーが笑う

『ま…楽勝でしょう？』

幻覚のシェリーが笑う

『あんたはそんなんじゃ死なないでしょ…』

幻覚のすみれが呆れながら言う


『幸ちゃんなら大丈夫！』

幻覚のツバメが笑う




『君ならできるだろう？

僕の弟子なんだ。』

幻覚の幸明がどや顔で言う



｢…！

死ぬ前に思い出すのがテメェの顔なんて嫌だっつうの!!｣


ダンッ!!

目の前に迫った岩を足場にし、地面に向かって一気に落下する


岩を蹴ったかたちになるが岩は変わらず落下する


ザッ!!

落下の瞬間にうまく着地する



｢王蹄!!｣

バゴォンッ!!

巨大な岩を打ち砕く


｢！｣

幸大が上を見上げると岩が落ちてくる


｢ハッ!!｣

ヒュッ!!

幸大が岩を避ける


次々と落下する岩を避けていく



｢はぁ…はぁ…｣



ズザザザザザザザザザァーーーーッ!!


｢土砂崩れ!?｣