ハートフル・アーツ
「ちくしょう!!


どこに行ったんだよ…」

幸大が言う



「その技は本来は尾行や探索には向かない技じゃからのう。


お主の間合いの中でのみ索敵や追尾の可能な技。


つまりは、お主の移動速度よりも相手の逃亡速度が早ければ間合いから抜け出し追いかけられなくなる。」



「老師!?」


「まったく…一部始終見ておったが、女心のわからん奴じゃな。」


「へ?」

「ことの詳細自体も武神流の開祖から聞いておる。」


「幸明が…」



「幸大…お主はバカじゃなかろうに…こと、女のことには不得手で師として情けない。」


「何のことですか?」




「あの娘、お前さんのことが好きなのではないか?


まぁ、深いモノではなくとも友達以上というところかのぉ?」


老師が言う


「昔、好きだったって言われた。

初恋の相手だって。」



「それを知っていて…


自分の婚約者の実家に肩身の狭い居候として置いておく…と?」


「いや、でも…」


「それが、武神流のお嬢ちゃんが言うなら彼女の心も変わったかも知れんがな…」


「…。」


「自分の好きな人が自分の好きな人の婚約者に頭を下げて自分を助けてもらう。


さて、彼女は誰に借りを返せば良いかの?」


「そりゃ、なずなに…」


「そうすればお前さんに借りを返さなくて良いと?

お前さんはそう思うじゃろうが…服部のお嬢ちゃんは自分の好きな人に何もしない訳にはいかないと思うわけじゃ。



しかし、お前さんに借りを返せば武神流のお嬢ちゃん相手にカドが立つ。



かと言って二人に借りを返せるほど軽い借りでもなく、一人に返すのが精一杯。


そういうことじゃ…。」



老師が言う
< 323 / 510 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop