ハートフル・アーツ
翌日

駅前

9時半


「なずな、もう来てたのか…」


幸大が言う

「幸大こそ…もう来たのか…」


なずなが言う


「…。」
「…。」


二人は少しの間見つめあう

「い、いきなり黙ってどうかしたのか…?」

なずなが言う


「いや…なずなの私服が可愛いなぁと思って。」

幸大が言う

「そ、そうか…

ありがとう。」

なずなが顔を赤くする






その少し離れた場所にすみれの姿があった


「ムキーッ!!

あのクズ、御姉様にデレデレと鼻の下を伸ばして…


御姉様が昨夜、気合いを入れて準備してたのはこのためでしたのね…


あんなクズのために買ったこともない雑誌を見てデートの知識を私にも聞いてきて…着なれないスカートを履いたり私にコーディネートについて聞いてきて…



甲斐甲斐しい御姉様は素敵ですが、相手があのクズなのは気に入らないわ!!」


すみれが言う





「じゃ、予定よりは早いけどデートを始めるか。」

幸大が言う

「ああ。」

なずなが頷く


「…。」

なずながゆっくりと幸大の手に触れようとする


「…っ。」

だがなずなは躊躇ってしまった



「なずな。」

「な、何だ?」

なずなが言う



「ちょっと手を出して。」


「こうか?」

なずなが両手を出す


「片手でいいっての。」

ぎゅっ。

幸大がなずなの手を握った


「あ…」

「その…せっかくのデートだから。」

幸大が言う

「…うん。」

二人は顔を赤らめて歩く



「(あっぶねー…

なずなが手を繋ごうとしてるのがわからなかったら今日はずっと繋げないままだったな。

流流しの流れを読む技術がなきゃなずなの動きに気づくこともなかったし…修行しててよかった。)」


幸大は心の中で安堵する
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