Sweet Heart
それにしてもお父さんの話って何だろ?
何てない話だと良いんだけど…。
靴に履き替え、校門を出る。
すると
「あっ、あの!すいません!」
「はっ、はい!」
突然誰かに腕を掴まれて呼ばれた。
私は思わずビクつきながら振り向く。
「あっ!あなたは今朝の…」
「はい!不良達に絡まれてた者です。」
私を呼んだ相手は、今朝不良達に絡まれていたエリート高校の男子生徒だった。
「あの…、今日は助けてくれようとしたのに、逃げてしまってすいませんでした!」
「えっ!?」
彼はそう言って私に頭を下げた。
しかしずっと頭を下げるものだから私は何て声を掛けて良いかわからずにいた。
「せっかく助けてくれたのに、あまりにも怖くてあなたを放って逃げてしまいました…。男のくせに情けないです。」
「いえ、私なら大丈夫でしたから気になさらないで下さい!むしろ、あなたが無事で良かったです!」
私はこれ以上落ち込ませないように彼に笑顔を向ける。
ようやく彼は頭を上げてくれて何度もお礼を言ってきた。
でも何で急に謝りに来たんだろ?
「…それでは僕は塾があるんで失礼しま「ちょっと待って!」
彼が立ち去ろうとしたが、今度は私が彼を引き止めた。
「何で急に謝ろうと思ったんですか?」
彼は私の大きな声に驚き、視線を逸らした。
何か私…まずいことでも言った?
気まずい沈黙が流れる中、彼は口を開いた。
「本当は言うなって言われたんですけど…。ある人に言われたんです。
助けてもらったくせに逃げんな!ちゃんと礼を言って来い!…と。
それでその人があなたはこの学校だって教えてくれたんです。」
ある人って一体誰が…?
「凄く目つきが悪くて怖そうな人でしたけど、彼に言われなかったら僕はずっと罪悪感でいっぱいでしたね。」
そう言って彼はスッキリしたように笑った。