Sweet Heart
道路を支配したかのように大勢で堂々とバイクを走らせる暴走族黒虎
途中警察に追われたが榎本喜一はお構いなしに走りつづけ、うまく撒き散らす
最初はあまりにも速いスピードと荒い運転に怖さを感じていたが、次第に慣れてきた
そうすると周りの景色を見る余裕もでき、流れる風を感じることができた
…冷たくて頬を横切る気持ちいい風
それと妙に落ちつく榎本喜一の背中…
背中にソッと耳を当てるとバイクのスピードとは違って鼓動がゆっくりと動いていた
その鼓動がなぜか心を落ち着かせ、穏やかな気持ちになる
不思議だわ…乱暴で野蛮で暴走族の総長なんかやってるこの男に、すごく安心できる自分がいる
何でだろう…
そんなことを考えながら私は榎本喜一の背中を後ろから抱きしめるようにしがみついた
「で!蘭姉さんは兄貴の彼女ですかい!?」
「はぁ!?んなわけあるか!」
バイクを走らせて2時間、適当に走りつづけてようやく倉庫の前まで戻ってきた
そして榎本喜一が改めて私を紹介し、今は初めに会った幸兎君にしつこいくらいに話しかけられている