Sweet Heart
「喜一さんのお母様は末っ子の心さんを出産されてから間もなく他界されました。
お父様は仕事が多忙で幼い真智さん達の世話を兄貴がずっとされていたのです」
お母様のことやお世話をしていたことは今日初めて知った…
私は黙って頷き、幸兎君の話を聞く
「兄貴はご友人と遊びに行きたいのを我慢し、家事や真智さん達のお世話をされてきました…。
せめて高校に入ったら自由にして欲しいとお父様は言っていたそうなのですが、
やはり家族想いの兄貴にはまだ幼い兄弟を置いて高校生活を楽しむことができませんでした…」
家族想いの榎本喜一なら大切な兄弟…真智ちゃん、楽君、心ちゃんを放って置けるはずがないのは想像できる
幸兎君の話を聞いて思った
榎本喜一はどれだけのものを犠牲にしていたんだろう、と……
「唯一、兄貴が楽しんでいたことは兄貴が作ったこの"黒虎"のメンバーと一緒にバイクで走ることでした…。
兄貴はああ見えてもいろいろ抱えるものがあり、バイクで走る時が全てを忘れることができたのです…。
そして偶然、黒虎のメンバーと楽しそうに笑っている兄貴を見た真智さんと楽さんが兄貴にせめて夜だけでも自由になって欲しいと言い出したというわけです」
幸兎君は榎本喜一の過去を一部始終話すと優しい笑顔を浮かべて榎本喜一を見ていた