Sweet Heart
そっ、そんなの…
「ストーップ!」
私はお父さんから退職届を奪い取って阻止した。
「今お父さんに会社辞められたら困るよ。」
「じゃあ、葵君の許嫁になってくれる?」
まるで雨に濡れた子犬のような目をして私を見つめるお父さん。
全く可愛くないんだけど、私は昔からお父さんのこの目には勝てない…。
「…わかった。良いよ。」
とうとう私は許嫁になることを承諾してしまった。
「それなら早速この紙に印鑑を押して!」
「えっ!ちょっとお父さんさっきと違わない!?」
しかしお父さんは先程までの悲しそうな表情は消え、一瞬にして明るい笑顔を見せた。
私はそんなお父さんの急変にわけがわからず、何かに印鑑を押される。
「よし!これで婚約成立だ!」
「よくやった!孝史!」
「「はぁ~!?」」
何と私が印鑑を押したのは、婚約届の紙だった。
「なっ、何で俺のは既に印鑑押してんだよ!」
「そりゃ、葵に拒否権はないからね~!」
しかも、ヒーローマン(偽)に関しては既に印鑑が押されている状態だった。