Sweet Heart
朝食も済ませ、みんなで家を出る。
「何してんだよ…。」
「ごめん!ちょっと忘れ物して…」
鍵を閉める前に忘れ物をしていたことに気づき、急いで取りに行くと、楽ちゃんは呆れたようにため息を吐いた。
本当は大した忘れ物じゃないんだけど、
幼い頃、誰かに貰った半分しかないクローバーのリングを通したネックレスを毎日つけていて
これがないと落ちつかないんだよね…。
「あっ!そうだ!みんな聞いてくれるかな?」
「「「んっ?」」」
私が鍵を閉めたと同時にお父さんは何か思い出したように言った。
「今日はみんなに言いたいことがあるから早く帰ってきなさい。」
「言いたいこと?」
「まぁ、それは帰ってからのお楽しみだ!」
私が首を傾げると、お父さんは満面の笑みで私の肩を叩く。
一体何だろう?
そんな私とお父さんを、楽ちゃんはただ黙って見ていた。
「それじゃ、早く帰ってくるんだよ!」
「「「は~い。」」」
そしてお父さんは私達と反対方向へと歩いて行った。
「あんま期待しねぇ方が良いだろうな…。」
「えっ?」
「じゃあな。」
お父さんの後ろ姿を見て、楽ちゃんは小さく呟き、先に歩き出す。
楽ちゃんは何かわかってるのかな?
「まちちゃん、早く行かないと間に合わなくなるよ?」
「そうだね!じゃあ、行こうか!」
私が考えている時、下から服を引っ張ってここちゃんが私に言った。
私は笑顔でここちゃんに応えると、ここちゃんと手を繋いで、幼稚園へと向かった。