Sweet Heart
「武蔵!どうしたの?」
「………。」
教室に着き鞄を置くと、前の席に座っている武蔵に話し掛けた。
しかし武蔵は私の方を振り向いてくれない…。
「さっき武蔵は葵君のこと認めないって言ってたけど、葵君は良い人だよ!
そりゃ、目つきが悪いし無愛想かもしれないけど、実は不器用なだけで本当は優しくて…」
「聞きたくねぇ!」
すると武蔵は机を思いきり叩き、大声で叫んで私の言葉を遮った。
…武蔵?
こんな荒々しい武蔵の姿を見たのは初めてで、私は硬直する。
「…あんな奴、絶対認めるものか。」
「武蔵…。」
何で武蔵が葵君を認めてくれないのかはわからない…。
むしろ武蔵は葵君の何が認められないんだろう…。
私はただみんなで仲良くしたいだけなのに…。
━バシッ!
「なぁ~に武蔵のくせに調子にのったことを言ってんのよ。」
「亜沙美!」
気まずい沈黙を破ってくれたのは亜沙美だった。
武蔵は亜沙美に叩かれた後頭部をさすりながら、「痛ぇな!」と言って涙目で睨む。
「葵君の何がそんなに気に喰わないか知らないけど、あんたのわがままで真智まで困らせんじゃないわよ!」
「…亜沙美。」
亜沙美がビシッと武蔵に渇を入れると、武蔵は気まずそうに目を逸らした。