不器用上司のアメとムチ

京介さんの姿は、窓際の大きなデスクのところではなく、お客さんが来たとき用のソファにあった。


「よく来たね、ヒメ」


彼が深く腰かけているその高級そうなソファはときどき、ベッドの代わりの役目も果たしていたんだよね……

なんてことを思い出す頭をぶんぶん振って、あたしは京介さんに問いかける。


「あの、なんであたしをここに……」

「まぁ、座って。それからきみは下がっていい」


きみ、と言われたのは、扉の脇で警備員みたいに姿勢よく立っている、秘書の女性だ。

クールビューティーを絵に描いたようなその美人は、かつて私の先輩だったひと。

彼女もあたしを嫌っていたはずだけど、綺麗なお辞儀をして副社長室を出ていき、ここにはあたしと京介さんの二人きりになった。

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