不器用上司のアメとムチ

「……少しは、新しい仕事に慣れた?」

「そう、ですね……まだまだ、できないことばかりですけど」

「正直、僕は一週間もたないと思ってたよ。ヒメのことだから、仕事がつらくて僕に泣きついてくるかと思った」


にっこり微笑みながら言われても、どんな反応をしていいのかわからない。

だってあんな風に突き放されたのに、泣きつくなんて……

いくらあたしが馬鹿でも、少しくらいはプライドってものがある。


「……ヒメが、もう少し人並みの仕事ができるようになったら……ここに戻ってきて欲しいと思ってるんだけど、どうかな?」


……あたしの脳が、一瞬フリーズした。


「あの……今なんて」

「いずれまた、僕の秘書になって欲しいなって」



……幻聴?

あたしは眉根を寄せて京介さんを見る。

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