不器用上司のアメとムチ

「……どうしたの?」

「どうしたって……それはこっちの台詞です。あの夜、京介さん散々あたしのことバカにしたじゃないですか、もうあたしには飽きたって」

「ああ、そんなこと言ったかもしれないね」


言ったかもって……

あたしはすごくショックだったのに、覚えていないの……?


「怒らないでよ、ヒメ」


そう言うと、京介さんは今まで座っていたあたしの向かい側のソファから立ち上がり、こちら側のソファの……あたしのすぐ隣に腰かけてきた。

そして、あたしの肩下で揺れる髪の毛をひと束つかむと、そこにゆっくりキスをする。


少し前までのあたしなら……

この人のこういう、キザな仕草が大好きだった。


だけど、今は何も感じない。

ヒメって呼ばれても嬉しくない。

あたしの居場所は、ここじゃない……

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