不器用上司のアメとムチ
「副社長の申し出はとてもありがたいことですが……私はこれからも、管理課の一員として仕事をしたいと思ってます。
だから、もうあなたの秘書には……」
京介さんの目を見ずに、そこまで言ったあたし。
だって、秘書ならさっきの先輩の方がきっと京介さんには相応しい。
それに、あたしは……
たとえ片想いでも、久我さんの近くに居たいから――――。
あたしが自分の膝ばかり見て黙っていると、隣で衣擦れの音がして、それから頬にあたたかくて柔らかいものが触れた。
「今、何を……!?」
思わず振り向いた私の目に飛び込んできたのは、京介さんの熱っぽい瞳。
「……僕がまだ、ヒメを愛していると言っても?」
その目であたしを捕らえたまま彼が囁いたのは、そんな愛の告白だった。
……訳がわからない。
あたしは捨てられたはずじゃなかったの?
愛しているなら、どうしてあんなこと……