不器用上司のアメとムチ

次に教えられた仕事は、タイムカードの処理だった。

普段は管理課五人の分だけ、前日の(今日は月曜だから金曜日の)出勤と退勤がちゃんと押されているかをパソコンで確認して、それからデータを保存するだけでいいらしい。

でも、出勤も退勤もエラーになっている者が約一名……


「久我さん……タイムカードちゃんと押さなきゃダメじゃないですか」

「あぁ?あーそれな、わざとだ。ちょっと貸せ」


私の背後に立ち一緒に画面を覗き込んでいた久我さんが、そう言って私の手の上からマウスを操作し始めた。


「ちょ、ちょっと待って下さい!手が!手が!」

「うるせーな。すぐ終わる」

「そういうことじゃなくて……!」


別にセクハラを訴えたいわけでも、ましてやときめいてるわけでもない。

ただ、周囲の視線が……!


案の定、向かい側の机に座る森永さんと佐々木が、こちらを見ながらヒソヒソと何かを話している。

隣の小出さんの表情までは見えないけど、絶対また何か嫌味なことを思われてるに違いない。

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