不器用上司のアメとムチ

京介さん……
今、なんて言いました……?


「どこの課のどいつだ。ヒメ、言うんだ」


じりじりと冷たい瞳が迫ってきて、あたしはソファの上で後ずさりする。

いつもの京介さんじゃない……


「い……いくら副社長だからって、何の罪もない社員を辞めさせるなんて勝手なことが許されるわけ……」

「――――罪ならある。僕のヒメを誘惑したという大罪が。さあ、誰なのか早く言うんだ」

「…………」


あたしがここで久我さんの名を言ったら、彼は会社を辞めさせられてしまうの?

そんな、人の一生を左右するようなこと……できるわけないよ……


「……言わなかったら、どうなるんですか?」

「ヒメが言わなくても僕が勝手に調査して、必ず誰なのか突き止める。だから結果は変わらない」

「そんな……」


これじゃまるで、王子様というより独裁者じゃない。

私のせいで、久我さんが……

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