不器用上司のアメとムチ
霞は少々世間知らずで抜けたところもあったが、馬鹿ではない。
それに、俺が重役の椅子には全く興味がないことも知っていたから、そんな噂は気にも留めないと思っていたのに……
『もうここへは来なくていいよ、久我。明日からきみが行くのは管理課だ。辞令もすぐに出させる』
ヤツはそう言って、俺をあっさり切り捨てた。
『次はもっと頭の悪そうな秘書をつけることにする。お前は頭が良すぎたんだ、久我』
……到底納得できないそんな理由で、俺は管理課という雑用部署に配属されることになったのだ。
その後霞は何人か秘書を変えたが、やつの気に入りが見つかったのは三年前……
当時は名前を知らなかったが、今思えばあの美人は梅だった。
二人が歩けば、社内中の人間が見とれる……
絵に描いたような、美男美女。
見た目も釣り合ってるし、霞が仕事をしやすいならいいだろうと、俺は特に気にしないようにしていたが……
そんな彼女が管理課に来ると聞いたときは、驚きと「またか……」という気持ちが入り交じった。