不器用上司のアメとムチ
しばらくの間、沈黙が流れた。
もしもまた久我さんとキスする機会があるなら、絶対に素面(しらふ)のときがいいと思っていたのに。
なんで、いつもこんな……
「……大丈夫だ」
おでこ同士をコツンとぶつけて、久我さんが言う。
「本当に……?」
「……ああ。約束する」
「ほんとのほんとにほんとですか……?」
子供みたいな言い方で念を押すと、久我さんはふっと笑ってあたしの瞳を覗き込んだ。
「――――ちょっと黙れ、この口」
そう言ったかと思うと、あたしの唇は塞がれていて……
「……ふ、…ぅ…ん」
ここ、まだ、部屋じゃないのに……
ベッドの中でするようなキスが次々襲ってきて、あたしの理性をひとつひとつ崩壊させてく。
他に待っているカップルは居ないみたいで、あたしたちの唇や舌が戯れるみだらな音ばっかりが、この場所に響いてる……