不器用上司のアメとムチ
もう、あと少しでキスの先まで行ってしまいそうだったあたしたちを止めたのは、フロントのおばさんの声だった。
「お待ちのお客様――」
そう一言だけ言って、わざわざここを覗きに来たりしないのがありがたかった。
あたしたちは絡み合った視線を名残惜しくほどくと、手を握りあって立ち上がった。
フロントで鍵を受け取り、エレベーターに乗るとすぐにまたあたしたちはキスを再開させた。
部屋は二階で、すぐに着くのに。
それすら待てないほどに、あたしたち、発情してた……
部屋に入ると、その内装を見る間もなくベッドになだれ込み、あたしは久我さんの首に腕を回して降ってくる熱いキスを受け止める。
「ん……っ」
やがてその唇が耳に移動し、優しく噛まれた耳たぶから伝わる甘い刺激に身を捩ったあたし。
「……弱いのか、耳」
ため息混じりに囁かれたあと、柔らかな舌がねじ込まれた。
「や、あ」
まだ胸も触られていないのに、お腹の下の方に熱が集中していくのがわかる。