不器用上司のアメとムチ
9.愛されたい
「久我さん……?」
目を閉じたままで手を伸ばしても、滑らかなシーツを撫でることしかできない。
うっすら瞳を開けると小さな窓の向こうが青空だったので、今が朝なんだと知ることができた。
布団をどけて身体を起こすと、あたしは一糸纏わぬ姿のまま。
そういえば、昨日、久我さんと――――
あたしは記憶を思い返し、幸せに浸ろうとしたけれど……
「久我さん、どこ……?」
ベッドの隣は誰もいない。
部屋の中にもいない。
バスルームも見に行ったけど、未使用のまま乾いていた。
残っていたのは灰皿に捨てられた二本の煙草の吸い殻と、その苦い香りだけ。
あたしはふと、その銀の灰皿の下にメモが挟んであるのに気がついた。
……嫌な予感がする。
だけど、連絡先とかかもしれないし……
あたしは恐る恐る、二つに折られたメモ紙を開いた。