不器用上司のアメとムチ
京介さんは人差し指であたしの唇に触れ、「ちょっと待ってて」と苦笑しながら颯爽とデスクまで歩いて電話を取った。
「はい。霞です」
その一連の動作は見とれてしまうほどに“できる男”の雰囲気が漂っていて、あたしはまたもあの人と比べてしまう。
顎と肩の間に受話器を挟んで、いつもかったるそうに電話に出る“元”上司と……
「――――ヒメ、管理からだ」
「え……?」
まさか、久我さん――?
「久我じゃないから安心していい。佐々木という男からだ」
京介さんの言葉に、あたしはほっとしたようながっかりしたような、複雑な気分になった。
でも、佐々木がいったい何の用……?