不器用上司のアメとムチ
コンビニか、近くのカフェで何かテイクアウトしてくるか……椅子に座ったままぼんやり考えていると、突然机の上に何かが落下してきた。
「…………メロンパン?」
手に取って眺めていると、今度は声が上から降ってきた。
「食堂はもう一杯だろ。それでよければやる。ついでに飲みもんは、ブラックかカフェオレか」
「……カフェオレで」
ほい、という久我さんの間の抜けた声と共に渡された紙カップからは、美味しそうな湯気が漂っていた。
あたしにそれを手渡すと、彼は自分の席にどかりと腰かけて私と同じメロンパンをかじる。
同じものを二つ買ったってことは……自分のためじゃないよね。飲み物も二つあるし……
「あの……すみません、気を遣わせてしまっているみたいで」
あたしの席から久我さんの席までは三メートルくらい距離があって、それが微妙に気まずいながらも彼に声を掛ける。
「別にお前が気にすることじゃねぇよ。そのメロンパン、この辺りで一番絶品なんだ。今まで王子さまのお供じゃなかなかそういうの食わなかっただろ」
「……はい、まぁ」
なんだか話がずれているような気もしたけど、言われてみれば確かに……メロンパンなんて久しぶりだ。