不器用上司のアメとムチ
「お電話代わりました、姫原です」
『ちょっ……梅チャン!なんで副社長室に居るの!!』
あまりの大声に、あたしは顔をしかめながら受話器を耳から離す。
「なんでって……帰るべき場所に帰っただけ」
『いやいやいや、意味わかんないし。やって欲しい仕事あるんだから早くこっち来てよ』
「…………無理」
『無理って……どうしちゃったんだよ一体』
「……そこにいる婦女暴行犯に聞いて」
え、と聞き返す佐々木を無視してあたしは勢いよく電話を切った。
今まであたしに良くしてくれた佐々木には悪いけど……
あたしはもう管理には戻らない。
「――――ヒメ、早速で悪いんだけど今日はうちのコーヒーを取り扱いたいというスーパーの役員と昼食を兼ねて打ち合わせがあるんだ。ついて来て」
京介さんがそう言いながら上着を手にとったので、あたしは慌てて袖を通すのを手伝う。
今度こそ飾りだけじゃなく、ちゃんと京介さんの役に立ちたいもん……