不器用上司のアメとムチ
顔の大きさくらいあるメロンパンの、ふわふわの網目を一口かじってみる。
「……美味しい」
今日はこんな風に一息つく暇もなかったから、口の中に広がる甘さが脳の疲れを取ってくれる気がする。
カフェオレに口をつけると、ミルクの優しさがお腹をあっためてくれた。
「……あいつら、今はあんなだけど悪い奴らじゃないんだ」
メロンパンの袋をくしゃっと丸めて、ゴミ箱に放り込んだ久我さんが言う。
「あいつら……?」
「森永達だよ。あいつら全員、他の課から追い出されたはみ出し者なんだ。だからどうも人を信用しねぇっつーか……梅につらく当たんのも、そのせいだろ」
他の課を、追い出された……
「その、理由って……」
「それはプライベートなことだから言えない。聞きたきゃ自分で聞くんだな。……ま、そういう訳だから、あいつらの言うことはいちいち真に受けんな」
久我さんはコーヒーの紙カップを捨てて、あたしの肩をぽんぽんと二回叩くと、管理課から出ていった。
久我さんに言われなくても、悪口を真に受けるつもりはなかったけど……
それでも彼のフォローは、素直にありがたかった。
――午後も、頑張れそう。