不器用上司のアメとムチ
『ごめんね……猛の気持ちに全然気づいてなくて』
「なんでお前が謝る。悪いのは、俺だ……」
どんな理由であれ、小さな命を宿した女の身体を穢そうとするなんて……
まともな人間のすることじゃない。
俺は二人の結婚式にも出てやらなかった。
親から送られてきた写真も……一度見てどこかにしまい込んだままだ。
光の出産を知らせる葉書も……
『聡がね……今、すごく苦しんでる。光があなたに会いたいと言うたびに、暗い表情をする。
今になって私に本当のことを話したのも、後悔の気持ちが大きいからだと思うの。
私は、そんな聡でも愛してる。だから、猛も……聡を許してあげて……?』
聡……同じ顔なのに俺より頭が良くて、世渡りもうまい双子の兄。
当時の俺なら、クリスマスの卑怯な嘘を許せずに聡を殴ったかもしれないが……
「たぶん俺も聡を何度も傷つけてる。だから……お互い様だって言っとけ」
聡も渚が好きだと言うことは、気づいていた。
気づいていたけど、渚が俺を選んでくれたことが嬉しくて、有頂天になって……
知らないうちに聡をたくさん傷つけていたはずだ。
『……できれば、猛の口から言ってほしいんだけど』
「……ああ?」
『何度も言ってるじゃない、光が会いたがってるって。来月誕生日だから、お祝いに来てくれない?……家族三人で待ってるから』
「……渚」