不器用上司のアメとムチ
『今度こそ、幼なじみに戻れるよね……?』
渚の問いに、俺は静かに目を閉じ「ああ……」と呟いた。
電話を切ると、俺はすっかり暗くなった街を歩き出す。
……渚を忘れられなかったのは、お互いの気持ちが見えなかったからだ。
そのわだかまりが解けた今、俺の心に浮かぶ人物はただ一人……
渚と聡、そしてきっと俺にも似ている甥に会いに行き、完全に過去の呪縛から解き放たれたその時には……
副社長室に囚われたお姫様を助けに行くとしよう。
「お前にゃ渡さねぇぞ……霞」
俺は夜空を見上げ、そこに輝く星の中でもいっそう明るい星を見つめて呟く。
敵はあんな風に眩しい王子と呼ばれる人物だとしても、アイツを諦める理由にはならない。
何度も泣かせたし、傷つけた償いはちゃんとするから……
またこの手に、アイツを……小梅を、抱き締めたいと思う。
そして、口にするのは苦手だと言って逃げずに気持ちを伝えるんだ。
お前が、好きだ。――――と。