不器用上司のアメとムチ
11.王子様の本心
九月に入ったある日の午後……
「ねぇヒメ、来週の日曜は空いてる?」
いつものように各課から上がってきたたくさんの書類を副社長室のテーブルの上で仕分けていると、京介さんがそう言ってあたしの隣に腰掛けた。
「空いてますけど……仕事ですか?」
「ううん、一緒にランチでもどうかと思って」
「行きます!」
仕事の手は止めずに、けれど内心はとても嬉しかった。
外でデートをするのは、京介さんの秘書に戻ってから初めてのこと。
やっぱり、あたしはちゃんと愛されてる……前に感じた不安は、考えすぎだったんだ。
「何食べに行きますか?」
「僕に任せてもらっていいかな?決まったら連絡するから」
「はい!京介さんと一緒ならどこでも!」
ニコニコ微笑んだあたしの頬にそっとキスをして、京介さんは笑った。
「その日に着て欲しい服があるんだ。今夜ヒメの自宅に届くよう手配してある。日曜はそれを着て、僕の隣に並んで欲しい」