不器用上司のアメとムチ
着せたい服まで選んでくれたなんて……
あたしは嬉しくて、少し涙ぐんでしまった。
「……さて。行きたくないとは思うけど管理課の責任者にこれを渡して来てくれるかな」
差し出されたのは、制服の注文表。
工場勤務の人たちが着る制服は、京介さんとそのお父様である社長の知り合いの洋品店に、安く作ってもらっているらしい。
この紙は管理に居た頃に見覚えがある。
たくさんコピーして、工場へ持っていくんだ。
「……わかりました」
管理に行くのは久しぶりで緊張するけど……久我さんが居たとしても、あの人の席は一番奥だし。
他の人に渡してさっさと帰ってきてしまおう、とあたしは副社長室をあとにした。