不器用上司のアメとムチ
「失礼しまーす……」
ひょこ、と扉から顔を覗かせ、懐かしい管理課内を見渡しても、そこには誰も居なかった。
全員居ないなんて珍しい……
でも、良かった。
久我さんだけでなく、佐々木や小出さんとも顔を合わせづらかったから……
静かに中を進むと、あたしの使っていたデスクは綺麗になっていて、真ん中にあたしの残していった筆記用具がぽつんと置かれていた。
「ついでだから、回収していこう……」
小さなメモ帳と、ピンク色の筆箱。
あたしはそれを手に持つと、相変わらず汚い一番奥のデスクへと向かっていった。
久我さんが居ない場合、彼に見てもらいたい書類はここに入れとくんだよね……
あたしは机の上のA4ファイルに、注文表を挟んだ。