不器用上司のアメとムチ
その夜、京介さんの言っていた通り、中身は服だと思われる大きな箱が家に届いた。
開けてみるとそこには、高級ブランドのワンピース。
黒地に白の花柄……京介さんの好きそうな大人っぽいシルエット。
「喜んで……いいんだよね?」
鏡の前で合わせてみると、サイズはぴったりだ。
だけど素敵な服に申し訳ないくらい……あたしの表情は暗かった。
あのあと外出から戻った京介さんは、疲れた顔でパソコンに向かうばっかりで、あたしのことなんか視界に入ってなくて。
定時になると「顔色が悪いから早く帰った方がいい」なんて、まるであたしを追い出したいみたいだった。
「……あたし、京介さんの何なんだろう」
恋人……には戻れていない気がする。
なんでだろう、京介さんの方から戻ってきて欲しいと言ったはずなのに。
あのとき、確かにあたしを愛してると言ったし、あたしに好きな人がいると知ったら怒ってくれてたのに。