不器用上司のアメとムチ

京介さんが予約した個室で、彼女と対面したとき……

あたしも、そして彼女――榎本さくらさん――も、お互いの姿を見てしばしの間呆然とした。

決して知り合いだったわけではない。

あたしたちが注目したのは、お互いの着ている服が同じであったことだ。


「うーん、そうだなぁ。容姿は甲乙つけがたし、ってところか。ありがとう、二人ともちゃんとその服を来てきてくれて」


京介さんのその発言で、このワンピースが送られてきた本当の理由がようやくわかった。

京介さんはただ単に……あたしとさくらさんを比べたかっただけなんだ。


あたしはもう、泣きも笑いもしない。

ただ目の前で起こることを、噛み砕かずに丸飲みするだけだ。

味なんて知りたくない。

どうせ惨めな味しかしないんだから……

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